有名問題・定理から学ぶ数学

Well-Known Problems and Theorems in Mathematics

数式を枠からはみ出さずに表示するためには, 画面を横に傾けてください.

本格数学クイズ (不等式)

不等式

クイズ《$3$ 変数の相加・相乗平均の不等式》

 体積が $V$ である直方体の縦の長さ, 横の長さ, 高さの平均値と, 体積が $V$ である立方体の $1$ 辺の長さは, どちらの方が長いか.
(有名問題)
$2025/05/09$$2025/05/09$

答え

 与えられた直方体が立方体であるとき両者は等しく, そうでないとき前者の方が長い.

解説

 与えられた直方体の縦の長さ, 横の長さ, 高さをそれぞれ $x,$ $y,$ $z$ とおき, \[ X = \sqrt[3]{x}, \quad Y = \sqrt[3]{y}, \quad Z = \sqrt[3]{z}\] とおく. このとき, 縦の長さ, 横の長さ, 高さの平均値 $A$ は \[ A = \dfrac{x+y+z}{3} = \dfrac{X^3+Y^3+Z^3}{3}\] である. また, 直方体の体積 $V$ は $V = xyz$ であるから, 体積が $V$ である立方体の $1$ 辺の長さ $G$ は \[ G = \sqrt[3]{xyz} = XYZ\] である. \[\begin{aligned} A-G &= \frac{X^3+Y^3+Z^3}{3}-XYZ \\ &= \frac{1}{3}(X+Y+Z)(X^2+Y^2+Z^2-XY-YZ-ZX) \\ &= \frac{1}{6}(X+Y+Z)\{ (X-Y)^2+(Y-Z)^2+(Z-X)^2\} \\ &\geqq 0 \end{aligned}\] であるから, $A \geqq G$ が成り立つ. ここで, 第 $2$ の等号は \[\begin{aligned} &X^3+Y^3+Z^3-3XYZ \\ &= (X+Y)^3-3XY(X+Y)+Z^3-3XYZ \\ &= (X+Y)^3+Z^3-3XY(X+Y+Z) \\ &= (X\!+\!Y\!+\!Z)^3\!-\!3(X\!+\!Y)Z(X\!+\!Y\!+\!Z)\!-\!3XY(X\!+\!Y\!+\!Z) \\ &= (X+Y+Z)\{ (X+Y+Z)^2-3(X+Y)Z-3XY\} \\ &= (X+Y+Z) \\ &\quad \times (X^2\!+\!Y^2\!+\!Z^2\!+\!2XY\!+\!2YZ\!+\!2ZX\!-\!3XY\!-\!3YZ\!-\!3ZX) \\ &= (X+Y+Z)(X^2+Y^2+Z^2-XY-YZ-ZX) \end{aligned}\] の両辺を $3$ で割ることで得られ, 第 $3$ の等号は \[\begin{aligned} &2(X^2+Y^2+Z^2-XY-YZ-ZX) \\ &= (X^2-2XY+Y^2)+(Y^2-2YZ+Z^2) \\ &\qquad +(Z^2-2ZX+X^2) \\ &= (X-Y)^2+(Y-Z)^2+(Z-X)^2 \end{aligned}\] の両辺を $2$ で割ることで得られる. 等号成立は, $X-Y = Y-Z = Z-X = 0,$ $X = Y = Z,$ $x = y = z$ のとき, つまり直方体が立方体であるときに限る.

クイズ《直角三角錐と内接球の体積比》

 立方体を $1$ つの平面で $2$ つに切断することにより, 立方体から四面体を切り取る. 四面体の内接球の四面体に対する体積比が最も大きくなるようにするとき, 四面体はどのような形になるか.
(オリジナル)
$2026/07/24$$2026/07/25$

答え

 直交する $3$ 本の辺の長さが等しい四面体.

解説

 立方体から切り取られてできる四面体において, 体積を $V,$ 直交する $3$ 本の辺の長さを $a,$ $b,$ $c$ とおき, 内接球の体積, 表面積, 半径をそれぞれ $W,$ $S,$ $r$ とおく.
(1)
まず, \[\begin{aligned} V &= \frac{1}{3}\cdot\frac{1}{2}ab\cdot c = \frac{abc}{6}, \\ W &= \frac{4\pi r^3}{3} \end{aligned}\] であるから, \[\frac{W}{V} = \frac{8\pi r^3}{abc} \quad \cdots [1]\] である.
(2)
また, 立方体の切り口に対応する四面体の面は $3$ 辺の長さが $u = \sqrt{b^2+c^2},$ $v = \sqrt{c^2+a^2},$ $w = \sqrt{a^2+b^2}$ の三角形であるから, その面積 $S_0$ は, 長さが $v,$ $w$ の辺のなす角を $\theta$ として, \[\begin{aligned} S_0 &= \frac{1}{2}vw\sin\theta \\ &= \frac{1}{2}vw\sqrt{1-\cos ^2\theta} \\ &= \frac{1}{4}\sqrt{4v^2w^2-4v^2w^2\cos ^2\theta} \\ &= \frac{1}{4}\sqrt{4v^2w^2-(v^2+w^2-u^2)^2} \quad \cdots [\ast ] \end{aligned}\] と表せる. ここで, \[\begin{aligned} 4v^2w^2 &= 4(c^2+a^2)(a^2+b^2) \\ &= 4\{ a^4+(b^2+c^2)a^2+b^2c^2\} \\ &= 4(a^4+b^2c^2+c^2a^2+a^2b^2), \\ (v^2+w^2-u^2)^2 &= \{ (c^2+a^2)+(a^2+b^2)-(b^2+c^2)\} ^2 \\ &= (2a^2)^2 \\ &= 4a^4 \\ \end{aligned}\] であるから, \[\begin{aligned} S_0 &= \frac{1}{4}\sqrt{4(b^2c^2+c^2a^2+a^2b^2)} \\ &= \frac{1}{2}\sqrt{b^2c^2+c^2a^2+a^2b^2} \end{aligned}\] である ($[\ast ]$ は「ヘロンの公式」の亜種であり, これを既知として解いてもよい).
(3)
よって, 四面体の表面積は \[ S = \frac{bc+ca+ab+\sqrt{b^2c^2+c^2a^2+a^2b^2}}{2}\] であるので, $V = \dfrac{1}{3}Sr$ から, \[\begin{aligned} r &= \frac{3V}{S} \\ &= \frac{abc}{bc+ca+ab+\sqrt{b^2c^2+c^2a^2+a^2b^2}} \quad \cdots [2] \end{aligned}\] である.
(4)
$[2]$ を $[1]$ に代入すると, \[\frac{W}{V} = 8\pi\cdot\frac{(abc)^2}{(bc+ca+ab+\sqrt{b^2c^2+c^2a^2+a^2b^2})^3}\] が得られる. ここで, $x = bc,$ $y = ca,$ $z = ab$ とおくと, \[\frac{W}{V} = \frac{8\pi xyz}{(x+y+z+\sqrt{x^2+y^2+z^2})^3}\] となるから, \[\begin{aligned} x+y+z &\geqq 3\sqrt[3]{xyz}, \\ \sqrt{x^2+y^2+z^2} &\geqq \sqrt{3\sqrt[3]{x^2y^2z^2}} = \sqrt 3\sqrt[3]{xyz} \end{aligned}\] により, \[\frac{W}{V} \leqq \frac{8\pi xyz}{((3+\sqrt 3)\sqrt[3]{xyz})^3} = \frac{8\pi}{(3+\sqrt 3)^3}\] となる. 等号成立は $x = y = z$ つまり $a = b = c$ のときに限る. ゆえに, 四面体の体積に対する内接球の体積の比が最大になるのは, 四面体の直交する $3$ 本の辺の長さが等しいときである.

参考

  • 互いに直交する $3$ 辺をもつ四面体を「直角三角錐」と呼ぶ.
  • 三角形の幾何学では, $3$ 辺の長さ $a,$ $b,$ $c$ の「対称式」において, $2$ 変数の式は, $b$ と $c$ の式, $c$ と $a$ の式, $a$ と $b$ の式の順に並べることが多い (頂点との対応関係がわかりやすいため, この順が好まれる).
  • 「直角三角錐」の頂点を $\mathrm O(0,0,0),$ $\mathrm A(a,0,0),$ $\mathrm B(0,b,0),$ $\mathrm C(0,0,c)$ とするとき, $\triangle\mathrm{ABC}$ の面積 $S_0$ はベクトル\[\overrightarrow{\mathrm{AB}} = (-a,b,0), \quad \overrightarrow{\mathrm{AC}} = (-a,0,c)\] を用いて \[\begin{aligned} S_0 &= \frac{1}{2}\sqrt{|\overrightarrow{\mathrm{AB}}|^2|\overrightarrow{\mathrm{AC}}|^2-(\overrightarrow{\mathrm{AB}}\cdot\overrightarrow{\mathrm{AC}})^2} \\ &= \frac{1}{2}\sqrt{(a^2+b^2)(a^2+c^2)-(a^2)^2} \\ &= \frac{1}{2}\sqrt{b^2c^2+c^2a^2+a^2b^2} \end{aligned}\] と求めることもできる.
  • $[\ast ]$ より対称性の高い公式 \[ S_0 = \frac{1}{4}\sqrt{2(v^2w^2+w^2u^2+u^2v^2)-(u^4+v^4+w^4)}\] もある.
  • 「直角三角錐」に対する内接球の体積比の最大値は \[\frac{8\pi}{(3+\sqrt 3)^3} = \frac{2(9-5\sqrt 3)\pi}{9} = 0.23718\cdots\] である.

クイズ《$2$ 乗平均平方根と相加平均の関係》

 長方形でない台形において, $2$ 本の脚 (底辺でない辺) を結び, 底辺に平行な線分のうち, 面積を二等分する線分, 高さを二等分する線分はどちらが長いか.
(有名問題)
$2026/04/10$$2026/04/10$

答え

 面積を二等分する線分.

解説

 $\mathrm{AD}$ と $\mathrm{BC}$ が平行で $\mathrm{AD} < \mathrm{BC}$ なる台形 $\mathrm{ABCD}$ を考え, その底辺の長さを $a = \mathrm{AD},$ $b = \mathrm{BC},$ 高さを $h$ とおく. $2$ 本の脚 $\mathrm{AB},$ $\mathrm{DC}$ を結び, 底辺に平行な線分のうち, 面積を二等分する線分 ($\mathrm{AB},$ $\mathrm{DC}$ との交点をそれぞれ $\mathrm P,$ $\mathrm Q$ とする) の長さを $r,$ 高さを二等分する線分の長さを $m$ とおく.
(1)
$r$ の値を求める. $\mathrm A,$ $\mathrm D$ から $\mathrm{BC}$ に下ろした垂線の足をそれぞれ $\mathrm H,$ $\mathrm K$ とおき, $\mathrm{PQ}$ に下ろした垂線の足をそれぞれ $\mathrm H_0,$ $\mathrm K_0$ とおく.
$\triangle\mathrm{APH}_0$ と $\triangle\mathrm{ABH},$ $\triangle\mathrm{DQK}_0$ と $\triangle\mathrm{DCK}$ はそれぞれ相似だから, \[\frac{h_0}{h} = \frac{\mathrm{PH}_0}{\mathrm{BH}} = \frac{\mathrm{QK}_0}{\mathrm{CK}}\] よって \[\frac{h_0}{h} = \frac{\mathrm{PH}_0+\mathrm{QK}_0}{\mathrm{BH}+\mathrm{CK}} = \frac{r-a}{b-a}\] が成り立つ (「加比の理」, こちらを参照). 一方, 線分 $\mathrm{PQ}$ は台形 $\mathrm{ABCD}$ の面積を二等分するから, \[ 2\cdot\frac{(a+r)h_0}{2} = \frac{(a+b)h}{2}\] つまり \[ 2(r+a)h_0 = (b+a)h\] が成り立つ. これに $h_0 = \dfrac{r-a}{b-a}h$ を代入すると, \[\begin{aligned} 2(r+a)\cdot\frac{r-a}{b-a}h &= (b+a)h \\ 2(r+a)(r-a) &= (b+a)(b-a) \\ 2(r^2-a^2) &= b^2-a^2 \\ 2r^2 &= a^2+b^2 \\ r^2 &= \frac{a^2+b^2}{2} \\ r &= \sqrt{\frac{a^2+b^2}{2}} \end{aligned}\] が得られる.
(2)
$m$ の値を求める. $m$ は線分 $\mathrm{AH}$ の垂直二等分線の台形 $\mathrm{ABCD}$ 上の部分の長さに等しいから, 中点連結定理により \[ m = \frac{a+b}{2}\] である.
(3)
$r,$ $m$ の値を比較する. \[\begin{aligned} r^2-m^2 &= \frac{a^2+b^2}{2}-\left(\frac{a+b}{2}\right) ^2 \\ &= \frac{a^2+b^2}{2}-\frac{a^2+2ab+b^2}{4} \\ &= \frac{a^2-2ab+b^2}{4} \\ &= \frac{(a-b)^2}{4} \\ &> 0 \quad (\because a < b) \end{aligned}\] であるから, $r^2 > m^2$ つまり $r > m$ である. ゆえに, 面積を二等分する線分の方が長い.

参考

  • $\sqrt{\dfrac{x_1{}^2+\cdots +x_n{}^2}{n}}$ は $x_1,$ $\cdots,$ $x_n$ の 「$2$ 乗平均平方根」と呼ばれ, 統計学, 物理学, 工学で重要な応用をもつ.
  • $x_1,$ $\cdots,$ $x_n$ の「$2$ 乗平均平方根」, 相加平均, 相乗平均,「調和平均」は,「一般化平均」または「ヘルダー平均」と呼ばれる代表値 \[ M_p(x_1,\cdots,x_n) = \left(\frac{1}{n}\sum_{k = 1}^nx_k{}^p\right) ^{\frac{1}{p}}\] ($p$: 実数) の特別な場合, つまり $p = 2,$ $1,$ $0,$ $-1$ の場合である ($p = 0$ の場合は $p \to 0$ のときの極限とみなすと相乗平均になる). 一般に, $p > q$ のとき \[ M_p(x_1,\cdots,x_n) \geqq M_q(x_1,\cdots,x_n)\] の成り立つことが知られている.

クイズ《積の和の最大値》

 $2$ 人 $1$ チームでゲームを行う. 全員が $1$ 番から $n$ 番までの合計 $n$ 枚の番号札を持ち, チームごとに $n$ 回に分けて $2$ 人同時に番号札を $1$ 枚ずつ場に出して, $2$ 枚の番号の積の合計をチームの得点とする. このゲームの得点として考えられる値は最大でいくらか. ただし, それぞれの番号札は $1$ 回しか使えないものとする.
(有名問題)
$2024/06/21$$2024/06/22$

答え

 $\dfrac{1}{6}n(n+1)(2n+1).$

解説

 $\{ a_1,\cdots,a_n\} = \{ 1,\cdots,n\}$ とする. 数列 $\{ ka_k\}$ の和 $S = \displaystyle\sum_{k = 1}^nka_k$ の最大値を求めればよい. $(a_k-k)^2 = a_k{}^2-2ka_k+k^2$ であるから, \[ ka_k = \frac{1}{2}\{ a_k{}^2+k^2-(a_k-k)^2\}\] が成り立つ. $k = 1,$ $\cdots,$ $n$ を代入して辺々を加えると \[\begin{aligned} S &= \sum_{k = 1}^nka_k \\ &= \frac{1}{2}\left\{\sum_{k = 1}^na_k{}^2+\sum_{k = 1}^nk^2-\sum_{k = 1}^n(a_k-k)^2\right\} \\ &= \sum_{k = 1}^nk^2-\frac{1}{2}\sum_{k = 1}^n(a_k-k)^2 \\ &= \frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)-\frac{1}{2}\sum_{k = 1}^n(a_k-k)^2 \end{aligned}\] が得られるから, $S$ は $a_k = k$ $(1 \leqq k \leqq n)$ のとき最大値 \[\frac{1}{6}n(n+1)(2n+1)\] をとる.

参考

 $x_1 \geqq \cdots \geqq x_n,$ $y_1 \geqq \cdots \geqq y_n,$ $\{\sigma (1),\cdots,\sigma (n)\} = \{ 1,\cdots,n\}$ のとき, \[\sum_{k = 1}^nx_ky_{n-k+1} \leqq \sum_{k = 1}^nx_ky_{\sigma (k)} \leqq \sum_{k = 1}^nx_ky_k\] が成り立ち, さらに $x_n \geqq 0,$ $y_n \geqq 0$ であれば \[\begin{aligned} (x_1+y_1)\cdots (x_n+y_n) &\leqq \{ x_1+y_{\sigma (1)}\}\cdots\{ x_n+y_{\sigma (n)}\} \\ &\leqq (x_1+y_n)\cdots (x_n+y_1) \end{aligned}\] が成り立つことが知られている. これらの不等式は「並べ替え不等式」 (rearrangement inequalities) として知られている.