有名問題・定理から学ぶ数学

Well-Known Problems and Theorems in Mathematics

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確率の基本

確率の基本

 事象 $E$ が起こる確率を $P(E)$ で表す.

定理《和事象の確率》

 事象 $A,$ $B$ について,
(1)
$A,$ $B$ の和事象 $A\cup B$ が起こる確率は, \[ P(A\cup B) = P(A)+P(B)-P(A\cap B)\] である.
(2)
$A,$ $B$ が互いに排反であるとき, \[ P(A\cup B) = P(A)+P(B)\] が成り立つ.

定理《余事象の確率》

 事象 $A$ の余事象 $\bar A$ が起こる確率 $P(\bar A)$ は, \[ P(\bar A) = 1-P(A)\] である.

定理《独立試行の確率》

 $2$ つの独立な試行 S, T を行うとき, S では事象 $A$ が起こり, T では事象 $B$ が起こるという事象 $C$ が起こる確率は, \[ P(C) = P(A)P(B)\] である.

問題《番勝負でリードを許さずに優勝する確率》

 A, B の $2$ 人が $2n−1$ 番勝負を行う. つまり, 引き分けのない勝負を繰り返し, 先に $n$ 勝した方を優勝者に決める.
(1)
A, B の勝ち星の取り方の総数を求めよ.
(2)
A が B に $1$ 度もリードを許さずに優勝する確率を求めよ. ただし, A, B の実力は互角とする.
 ここで, \[\sum\limits_{k = n}^N{}_k\mathrm C_n = {}_{N+1}\mathrm C_{n+1}\] が成り立つことは証明なしに使ってよい (こちらを参照). また, 互いに区別のできない $2n$ 個のものを A, B に $1$ 個ずつ配っていき, 両者が合計 $n$ 個ずつもつようにするとき, どの時点でも A の個数が B の個数を下回らないような場合の数は, $n$ 番目の「カタラン数」$C_n$ と呼ばれ, \[ C_n = \frac{{}_{2n}\mathrm C_n}{n+1}\] であることが知られている (こちらを参照).
実戦素朴$2023/04/03$$2023/04/05$

解答例

(1)
$0$ 以上 $n-1$ 以下の各整数 $k$ に対して, A が $n$ 勝 $k$ 敗で優勝する場合の数も B が $n$ 勝 $k$ 敗で優勝する場合の数も ${}_{n+k}\mathrm C_n$ であるから, 求める場合の数は \[ 2({}_n\mathrm C_n+\cdots +{}_{2n-1}\mathrm C_n) = 2\cdot{}_{2n}\mathrm C_{n+1} = \frac{2(2n)!}{(n+1)!(n-1)!}\] である.
(2)
A が B に $1$ 度もリードを許さずに優勝する場合の数は, 優勝者が決まった後は両者が $n$ 勝 $n$ 敗になるまで優勝者が勝ちを譲るという取り決めのもとで $2n$ 回の勝負をするとき, A の負けが先行しない場合の数に他ならず, $n$ 番目の「カタラン数」 \[ C_n = \frac{{}_{2n}\mathrm C_n}{n+1} = \frac{(2n)!}{(n+1)!n!}\] に等しい. よって, 求める確率は, \[\frac{(2n)!}{(n+1)!n!}\div\frac{2(2n)!}{(n+1)!(n-1)!} = \frac{1}{2n}\] である.

問題《ブールの不等式とボンフェローニの不等式》

 $n$ 個の事象 $A_1,$ $\cdots,$ $A_n$ $(n \geqq 2)$ に対して \[\begin{aligned} P(A_1\cup\cdots\cup A_n) &\leqq P(A_1)+\cdots +P(A_n) \quad \cdots [1], \\ P(A_1\cap\cdots\cap A_n) &\geqq P(A_1)+\cdots +P(A_n)-(n-1) \quad \cdots [2] \end{aligned}\] が成り立つことを示せ.
標準定理$2024/01/11$$2024/07/03$

解答例

 $[1]$ を事象の個数 $n$ に関する数学的帰納法で示す.
(i)
$n = 2$ のとき. \[\begin{aligned} P(A_1\cup A_2) &= P(A_1)+P(A_2)-P(A_1\cap A_2) \\ &\leqq P(A_1)+P(A_2) \end{aligned}\] であるから, $[1]$ が成り立つ.
(ii)
$n = k$ ($k$: $2$ 以上の整数) のとき $[1]$ が成り立つとすると, \[\begin{aligned} &P(A_1\cup\cdots\cup A_k\cup A_{k+1}) \\ &\leqq P(A_1\cup\cdots\cup A_k)+P(A_{k+1}) \quad (\because n = 2\text{ の場合}) \\ &\leqq P(A_1)+\cdots +P(A_k)+P(A_{k+1}) \quad (\because\text{仮定}) \end{aligned}\] となるから, $n = k+1$ のとき $[1]$ が成り立つ.
(i), (ii) から, $2$ 以上のすべての整数 $n$ に対して $[1]$ が成り立つ.
 また, $[1]$ とド・モルガンの法則により, \[\begin{aligned} &P(A_1\cap\cdots\cap A_n) = P(\overline{\overline{A_1\cap\cdots\cap A_n}}) \\ &= 1-P(\overline{A_1\cap\cdots\cap A_n}) \\ &= 1-P(\overline{A_1}\cup\cdots\cup\overline{A_n}) \quad (\because\text{ド・モルガンの法則}) \\ &\geqq 1-P(\overline{A_1})-\cdots -P(\overline{A_n}) \quad (\because [1]) \\ &= 1-\{ 1-P(A_1)\}-\cdots -\{ 1-P(A_n)\} \\ &= P(A_1)+\cdots +P(A_n)-(n-1) \end{aligned}\] が得られる.

参考

 $[1]$ は「ブールの不等式」(Boole's inequality), $[2]$ は「ボンフェローニの不等式」(Bonferroni's inequality) として知られている.

問題《じゃんけんであいこになる確率》

 $n$ を $2$ 以上の整数とする. $n$ 人のじゃんけんであいこになる確率 $p_n$ を求めよ.
標準素朴$2019/04/17$$2024/03/25$

解答例

 $n$ 人のじゃんけんで, 全員の手の出し方は $3^n$ 通りある.
 あいこにならないのは, 全員の出した手がちょうど $2$ 種類になる場合である. この場合に, グー, チョキ, パーの $3$ 種類から $2$ 種類を選ぶ方法が ${}_3\mathrm C_2 = 3$ 通りあり, そのそれぞれに対して全員の手の出し方が $2^n-2$ 通りある. よって, あいこにならない場合の数は $3(2^n-2)$ であるから, あいこにならない確率は \[\frac{3(2^n-2)}{3^n} = \frac{2^n-2}{3^{n-1}}\] である.
 ゆえに, あいこになる確率は, \[ p_n = 1-\frac{2^n-2}{3^{n-1}} = \frac{3^{n-1}-2^n+2}{3^{n-1}}\] である.

別解

 $n+1$ 人のじゃんけんであいこになる事象は, $n$ 人と $n+1$ 人目が何種類の手を出すかに着目すると, 次の $3$ つに分けられる.
(i)
$n$ 人が同じ手を出して, $n+1$ 人目がそれと同じ手を出す事象. この確率は $\dfrac{3}{3^n}\cdot\dfrac{1}{3}$ である.
(ii)
$n$ 人が $2$ 種類の手を出し ($n$ 人があいこにならず), $n+1$ 人目がそれらと異なる手を出す事象. この確率は $(1-p_n)\cdot\dfrac{1}{3}$ である.
(iii)
$n$ 人が $3$ 種類の手を出して, $n+1$ 人目が任意の手を出す事象. この確率は $\left( p_n-\dfrac{3}{3^n}\right)\cdot 1$ である.
(i)~(iii) は排反であるから, \[\begin{aligned} p_{n+1} &= \frac{3}{3^n}\cdot\frac{1}{3}+(1-p_n)\cdot\frac{1}{3}+\left( p_n-\frac{3}{3^n}\right)\cdot 1 \\ &= \frac{2}{3}p_n-\frac{2}{3^n}+\frac{1}{3} \end{aligned}\] が成り立つ. これは \[\begin{aligned} p_{n+1}-1 &= \frac{2}{3}(p_n-1)-\frac{2}{3^n} \\ 3^n(p_{n+1}-1) &= 2\cdot 3^{n-1}(p_n-1)-2 \end{aligned}\] と変形できる. $a_n = 3^{n-1}(p_n-1)$ とおくと, \[\begin{aligned} &a_{n+1} = 2a_n-2, \quad a_{n+1}-2 = 2(a_n-2), \\ &a_2 = 3(p_2-1) = 3\left(\frac{1}{3}-1\right) = -2 \end{aligned}\] から, \[\begin{aligned} a_n-2 &= (a_2-2)2^{n-2} = -4\cdot 2^{n-2} = -2^n \\ a_n &= -2^n+2 \end{aligned}\] となる. ゆえに, 求める確率は, \[ p_n = 1+\frac{a_n}{3^{n-1}} = \frac{3^{n-1}-2^n+2}{3^{n-1}}\] である.

参考

 一般に, $n$ 人を互いに区別できる $r$ 個の部屋に空室なく部屋割りする方法の総数は \[\sum_{k = 1}^r(-1)^{r-k}{}_r\mathrm C_kk^n\] であることが知られている. $n$ 人のじゃんけんであいこになるのは, 全員が同じ手を出す $3$ 通りと, 全員がちょうど $3$ 種類の手を出す
$\displaystyle\sum_{k = 1}^3(-1)^{3-k}{}_3\mathrm C_kk^n = 3\cdot 1^n-3\cdot 2^n+1\cdot 3^n$ (通り)
に分けられるから, 求める確率は \[\frac{3+(3\cdot 1^n-3\cdot 2^n+1\cdot 3^n)}{3^n} = \frac{3^{n-1}-2^n+2}{3^{n-1}}\] と求められる.

問題《独立な事象の余事象の独立性》

 事象 $A$ と $B$ が独立であるならば, $A$ と $\bar B,$ $\bar A$ と $B,$ $\bar A$ と $\bar B$ はそれぞれ独立であることを示せ.
基本定理$2022/11/29$$2022/11/29$

解答例

 事象 $A$ と $B$ が独立であるとする.
(i)
このとき, \[\begin{aligned} P(A\cap\bar B) &= P(A)-P(A\cap B) = P(A)-P(A)P(B) \\ &= P(A)\{ 1-P(B)\} = P(A)P(\bar B) \end{aligned}\] が成り立つから, $A$ と $\bar B$ は独立である.
(ii)
(i) において $A$ と $B$ を入れ替えれば, $\bar A$ と $B$ は独立であることがわかる.
(iii)
(ii) により, (i) の結果を $\bar A$ と $B$ に適用すると, $\bar A$ と $\bar B$ は独立であることがわかる.
問題一覧 (確率)確率の基本 反復試行の確率
条件付き確率 期待値(新課程)