有名問題・定理から学ぶ数学

Well-Known Problems and Theorems in Mathematics

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関数の極限

関数の極限

問題《双曲線の漸近線》

 双曲線 $H:\dfrac{x^2}{a^2}-\dfrac{x^2}{b^2} = 1$ $(a,\ b > 0)$ が直線 $y = \pm\dfrac{b}{a}x$ を漸近線にもつことを, 極限を使って示せ.

解答例

 $H$ は座標軸に関して対称であるから, 第 $1$ 象限の部分が $y = \dfrac{b}{a}x$ を漸近線にもつことを示せば十分である. $H$ は第 $1$ 象限において \[ y = \frac{b}{a}\sqrt{x^2-a^2}\] で表され, \[\begin{aligned} &\left| y-\frac{b}{a}x\right| = \frac{b}{a}x-\frac{b}{a}\sqrt{x^2-a^2} \\ &= \frac{b}{a}(x-\sqrt{x^2-a^2}) = \frac{b}{a}\cdot\frac{(x-\sqrt{x^2-a^2})(x+\sqrt{x^2-a^2})}{x+\sqrt{x^2-a^2}} \\ &= \frac{b}{a}\cdot\frac{x^2-(x^2-a^2)}{x+\sqrt{x^2-a^2}} = \frac{b}{a}\cdot\frac{a^2}{x+\sqrt{x^2-a^2}} \\ &\to 0 \quad (x \to \infty ) \end{aligned}\] が成り立つから, $H$ は $y = \dfrac{b}{a}x$ を漸近線にもつ.
(最終更新日: $2022/06/10$)

$\sin x/x$ の極限

定理《$\sin x/x$ の極限》

\[\lim_{x \to 0}\frac{\sin x}{x} = 1\] が成り立つ.

証明

 まず, $\lim\limits_{x \to +0}\dfrac{\sin x}{x} = 1$ を示す. $0 < x < \dfrac{\pi}{2}$ の範囲で考えれば十分である. 点 $\mathrm O$ を中心とする半径 $1,$ 中心角 $x$ の扇形 $\mathrm{OAB}$ を考える. 点 $\mathrm B$ から線分 $\mathrm{OA}$ に下ろした垂線の足を $\mathrm H$ とおき, 点 $\mathrm A$ を通り $\mathrm{HB}$ と平行な直線が直線 $\mathrm{OB}$ と交わる点を $\mathrm T$ とおく. 扇形 $\mathrm{OAB}$ の面積を $S$ とおくと, \[\triangle\mathrm{OAB} < S < \triangle\mathrm{OAT}\] となる. $\mathrm{BH} = \sin x,$ $\mathrm{AT} = \tan x$ であるから, \[\frac{1}{2}\cdot 1\cdot \sin x < \frac{1}{2}\cdot 1^2\cdot x < \frac{1}{2}\cdot 1\cdot\tan x\] となり, \[\sin x < x < \tan x\] となる. 各辺を $\sin x$ で割ると \[ 1 < \frac{x}{\sin x} < \frac{1}{\cos x}\] となるから, 各辺の逆数をとると \[ 1 > \frac{\sin x}{x} > \cos x\] となる. $\lim\limits_{x \to +0}\cos x = 1$ であるから, 挟みうちの原理により \[\lim\limits_{x \to +0}\frac{\sin x}{x} = 1 \quad \cdots [1]\] が成り立つ. よって, \[\lim\limits_{x \to -0}\frac{\sin x}{x} = \lim\limits_{x \to -0}\frac{\sin (-x)}{-x} = \lim\limits_{x \to +0}\frac{\sin x}{x} = 1 \quad \cdots [2]\] が成り立つ. $[1],$ $[2]$ から, 求める等式が得られる.

問題《ヴィエトの公式》

 次のことを示せ.
(1)
すべての角 $\theta$ と正の整数 $n$ に対して \[\cos\frac{\theta}{2}\cdots\cos\frac{\theta}{2^n}\sin\frac{\theta}{2^n} = \frac{1}{2^n}\sin\theta\] が成り立つ.
(2)
\[\frac{2}{\pi} = \lim\limits_{n \to \infty}\left(\cos\frac{\pi}{4}\cdots\cos\frac{\pi}{2^{n+1}}\right)\] が成り立つ.
(参考: $2005$ 名古屋大)

解答例

(1)
倍角の公式により \[\cos\frac{\theta}{2^k}\sin\frac{\theta}{2^k} = \frac{1}{2}\cos\frac{\theta}{2^{k-1}}\] であるから, \[\begin{aligned} \cos\frac{\theta}{2}\cdots\cos\frac{\theta}{2^n}\sin\frac{\theta}{2^n} &= \frac{1}{2}\cos\frac{\theta}{2}\cdots\cos\frac{\theta}{2^{n-1}}\sin\frac{\theta}{2^{n-1}} \\ &= \cdots \\ &= \frac{1}{2^{n-1}}\cos\frac{\theta}{2}\sin\frac{\theta}{2} \\ &= \frac{1}{2^n}\sin\theta \end{aligned}\] が成り立つ.
(2)
(1) の結果に $\theta = \dfrac{\pi}{2}$ を代入すると, \[ \cos\frac{\pi}{4}\cdots\cos\frac{\pi}{2^{n+1}}\sin\frac{\pi}{2^{n+1}} = \frac{1}{2^n}\] から \[\begin{aligned} \cos\frac{\pi}{4}\cdots\cos\frac{\pi}{2^{n+1}} &= \frac{1}{2^n}\div\sin\frac{\pi}{2^{n+1}} \\ &= \frac{2}{\pi}\cdot\frac{\pi}{2^{n+1}}\div\sin\frac{\pi}{2^{n+1}} \\ &\to \frac{2}{\pi}\cdot 1 = \frac{2}{\pi} \quad (n \to \infty ) \end{aligned}\] となる.

参考

  • (1) の等式(特に $\theta = 160^\circ,$ $n = 3$ の場合)は「モリーの法則」と呼ばれる(別証明についてはこちらを参照).
  • 半角の公式 $\cos ^2\dfrac{\theta}{2} = \dfrac{1+\cos\theta}{2}$ により \[\begin{aligned} \cos\frac{\pi}{4} &= \frac{\sqrt 2}{2}, \\ \cos\frac{\pi}{8} &= \sqrt{\frac{1+\dfrac{\sqrt 2}{2}}{2}} = \frac{\sqrt{2+\sqrt 2}}{2}, \\ \cos\frac{\pi}{16} &= \sqrt{\frac{1+\dfrac{\sqrt{2+\sqrt 2}}{2}}{2}} = \frac{\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt 2}}}{2},\ \cdots \end{aligned}\] であるから, (2) により \[\frac{2}{\pi} = \cdot\frac{\sqrt 2}{2}\cdot\frac{\sqrt{2+\sqrt 2}}{2}\cdot\frac{\sqrt{2+\sqrt{2+\sqrt 2}}}{2}\cdot\cdots\] が成り立つ. これは, 「ヴィエトの公式」(Viète's formula)として知られており($1593$ 年), $\pi$ が現れる無限和または無限積の公式としてはヨーロッパで初めて発見されたものである. それ以前には, $\tan x$ の逆関数 $\mathrm{arctan}\,x$ の展開公式 $\mathrm{arctan}\,x = \sum\limits_{n = 0}^\infty\dfrac{(-1)^n}{2n+1}x^{2n+1}$ $(-1 \leqq x \leqq 1)$ がインドのケーララ学派の間で知られていたため, この種の公式としては $\dfrac{\pi}{4} = \sum\limits_{n = 0}^\infty\dfrac{(-1)^n}{2n+1}$ が最も古いと考えられている.
(最終更新日: $2022/06/13$)

問題《正多角柱につながれたヤギの問題》

 $n$ を $2$ 以上の整数とする. 単位円周上の点 $\mathrm P_k\left(\cos\dfrac{k\pi}{n},\sin\dfrac{k\pi}{n}\right)$ $(0 \leqq k \leqq 2n-1)$ を結ぶ正 $2n$ 角形 $\mathrm P_1\mathrm P_2\cdots\mathrm P_{2n}$ において, 一端が頂点 $\mathrm P_1$ に固定され, 長さ $L$ が周の半分に等しく, 伸び縮みのしないひもが, 周上にたるみなく巻きつけられている. ひもの先端にヤギをつなぐとき, ヤギが動き回れる範囲全体の面積を $S_{2n}$ とおく. さらに, $x$ 軸より上方でヤギが動き回れる範囲のうち, $x$ 軸と直線 $\mathrm P_1\mathrm P_2$ で挟まれる部分の面積を $T_0,$ 直線 $\mathrm P_k\mathrm P_{k+1}$ と直線 $\mathrm P_{k+1}\mathrm P_{k+2}$ で挟まれる部分の面積を $T_k$ $(1 \leqq k \leqq n-1)$ とおく. ただし, ひものつなぎ目, ヤギの大きさは考えないものとする.
(1)
ひもの長さ $L$ を求めよ.
(2)
面積 $T_0$ を求めよ.
(3)
面積 $T_k$ $(1 \leqq k \leqq n-1)$ を求めよ.
(4)
面積 $S_{2n}$ を求めよ.
(5)
極限値 $\lim\limits_{n \to \infty}S_{2n}$ を求めよ.
(参考: 津田塾大)

解答例

 正 $2n$ 角形は頂角の大きさが $\dfrac{2\pi}{2n} = \dfrac{\pi}{n}$ の二等辺三角形 $2n$ 個に分けられるから, 単位円に内接するとき, その $1$ 辺の長さは \[ 2\sin\left(\frac{1}{2}\cdot\frac{\pi}{n}\right) = 2\sin\frac{\pi}{2n}\] である. また, 正 $2n$ 角形の外角の大きさは $\dfrac{2\pi}{2n} = \dfrac{\pi}{n}$ である.
(1)
ひもの長さは, 正 $2n$ 角形の周の長さの半分であり, $n$ 本分の辺の長さに等しいから, \[ L = 2n\sin\frac{\pi}{2n}\] である.
(2)
原点を $\mathrm O$ とおく. $\triangle\mathrm O\mathrm P_1\mathrm P_2$ において $\angle\mathrm P_1$ の内角の大きさは \[\frac{1}{2}\left(\pi -\frac{\pi}{n}\right) = \dfrac{n-1}{2n}\pi,\] $\angle\mathrm P_1$ の外角の大きさは \[\pi -\frac{n-1}{2n}\pi = \frac{n+1}{2n}\pi\] であるから, \[\begin{aligned} T_0 &= \frac{1}{2}L^2\frac{n+1}{2n}\pi \\ &= \frac{1}{2}\left( 2n\sin\frac{\pi}{2n}\right) ^2\frac{n+1}{2n}\pi \\ &= n(n+1)\pi\sin ^2\frac{\pi}{2n} \end{aligned}\] である.
(3)
$1 \leqq k \leqq n-1$ とする. 頂点 $\mathrm P_{k+1}$ までひもを巻きつけたとき, ひもの可動部分の長さは \[ L-k\cdot 2\sin\frac{\pi}{2n} = 2(n-k)\sin\frac{\pi}{2n}\] であるから, \[\begin{aligned} T_k &= \frac{1}{2}\left\{ 2(n-k)\sin\frac{\pi}{2n}\right\} ^2\frac{\pi}{n} \\ &= \frac{2(n-k)^2}{n}\pi\sin ^2\frac{\pi}{2n} \end{aligned}\] である.
(4)
ヤギが動き回れる範囲は $x$ 軸に関して対称であるから, \[ S_{2n} = 2\left( T_0+\sum_{k = 1}^{n-1}T_k\right)\] である. ここで, \[\begin{aligned} \sum_{k = 1}^{n-1}T_k &= \sum_{k = 1}^{n-1}\frac{2(n-k)^2}{n}\pi\sin ^2\frac{\pi}{2n} \\ &= \frac{2\pi}{n}\sin ^2\frac{\pi}{2n}\sum_{k = 1}^{n-1}(n-k)^2 \\ &= \frac{2\pi}{n}\sin ^2\frac{\pi}{2n}\sum_{k = 1}^{n-1}k^2 \\ &= \frac{2\pi}{n}\sin ^2\frac{\pi}{2n}\cdot\frac{(n-1)n(2n-1)}{6} \\ &= \frac{(n-1)(2n-1)}{3}\pi\sin ^2\frac{\pi}{2n}, \\ T_0+\sum_{k = 1}^{n-1}T_k &= n(n+1)\pi\sin ^2\!\frac{\pi}{2n}+\frac{(n-1)(2n-1)}{3}\pi\sin ^2\!\frac{\pi}{2n} \\ &= \frac{3n(n+1)+(n-1)(2n-1)}{3}\pi\sin ^2\frac{\pi}{2n} \\ &= \frac{5n^2+1}{3}\pi\sin ^2\frac{\pi}{2n} \end{aligned}\] であるから, 求める面積は \[ S_{2n} = \frac{2(5n^2+1)}{3}\pi\sin ^2\frac{\pi}{2n}\] である.
(5)
\[\begin{aligned} S_{2n} &= \left(\frac{\pi}{2n}\right)^2\frac{2(5n^2+1)}{3}\pi\left(\frac{\sin\dfrac{\pi}{2n}}{\dfrac{\pi}{2n}}\right) ^2 \\ &= \frac{5n^2+1}{6n^2}\pi ^3\left(\frac{\sin\dfrac{\pi}{2n}}{\dfrac{\pi}{2n}}\right) ^2 \\ &\to \frac{5}{6}\pi ^3 \quad (n \to \infty ) \end{aligned}\] であるから, 求める極限値は $\lim\limits_{n \to \infty}S_{2n} = \dfrac{5}{6}\pi ^3$ である.

参考

  • この種の問題は「ヤギの問題」(goat problem, bull-tethering problem)として知られている. ヤギをつなぐ柱の大きさや形状, ひもの長さなどによって, さまざまな問題が考えられる. 本問では, ヤギが正多角柱にその周りを $1$ 周できるようにつながれた場合を考えた. 求めた極限値は, 正多角柱を円柱に置き換えた場合(こちらを参照)のヤギが動き回れる範囲の面積に等しい.
  • 伸び縮みのしないひもをある図形にたるみなく巻きつけていくとき, またはそれをたるみなくほどいていくとき, ひもの先端が描く軌跡はその図形の「伸開線」または「インボリュート」(involute)と呼ばれる.
(最終更新日: $2022/06/24$)

自然対数

 こちらを参照.