有名問題・定理から学ぶ数学

Well-Known Problems and Theorems in Mathematics

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$2$ 次不等式

$2$ 次不等式

定理《絶対 $2$ 次不等式の成立条件》

 $a$ を正の数, $b,$ $c$ を実数, $f(x) = ax^2+bx+c$ を $2$ 次関数とする. すべての実数 $x$ に対して $2$ 次不等式 $f(x) > 0$ が成り立つためには, $f(x)$ の最小値が正であること, つまり $f(x)$ の判別式 $D = b^2-4ac$ が負であることが必要十分である.

問題《多変数のコーシー=シュワルツの不等式》

 $n$ を $2$ 以上の整数, $x_1,$ $\cdots,$ $x_n,$ $y_1,$ $\cdots,$ $y_n$ を実数とする. すべての実数 $t$ に対して $t$ の $2$ 次不等式 \[ (tx_1-y_1)^2+\cdots +(tx_n-y_n)^2 \geqq 0\] が成り立つことから, 不等式 \[ (x_1y_1+\cdots +x_ny_n)^2 \leqq (x_1{}^2+\cdots +x_n{}^2)(y_1{}^2+\cdots +y_n{}^2)\] が成り立つことを示せ. また, 等号成立条件を求めよ.

解答例

(i)
$(x_1,\cdots,x_n) = (0,\cdots,0)$ のとき. \[ (x_1y_1\!+\!\cdots\!+\!x_ny_n)^2 \!=\! (x_1{}^2\!+\!\cdots\!+\!x_n{}^2)(y_1{}^2\!+\!\cdots\!+\!y_n{}^2) \!=\! 0\] が成り立つ.
(ii)
$(x_1,\cdots,x_n) \neq (0,\cdots,0)$ のとき. すべての実数 $t$ に対して $t$ の $2$ 次不等式 \[ (tx_1-y_1)^2+\cdots +(tx_n-y_n)^2 \geqq 0 \quad \cdots [1]\] つまり \[ (x_1{}^2\!+\!\cdots\!+\!x_n{}^2)t^2\!-\!2(x_1y_1\!+\!\cdots\!+\!x_ny_n)t\!+\!(y_1{}^2\!+\!\cdots\!+\!y_n{}^2) \!\geqq\! 0\] が成り立つから, $(\text{左辺}) = 0$ の判別式 $D$ について $\dfrac{D}{4} \leqq 0$ から \[ (x_1y_1\!+\!\cdots\!+\!x_ny_n)^2\!-\!(x_1{}^2\!+\!\cdots\!+\!x_n{}^2)(y_1{}^2\!+\!\cdots\!+\!y_n{}^2) \!\leqq\! 0\] が成り立ち, 求める不等式 \[ (x_1y_1+\cdots +x_ny_n)^2 \leqq (x_1{}^2+\cdots +x_n{}^2)(y_1{}^2+\cdots +y_n{}^2)\] が得られる. また, 等号成立は, $[1]$ において等号が成り立つ \[\begin{aligned} &tx_1-y_1 = \cdots = tx_n-y_n = 0 \quad\text{つまり} \\ &(y_1,\cdots,y_n) = (tx_1,\cdots,tx_n) \quad (t\text{: 実数}) \end{aligned}\] の場合に限る.
(i), (ii) から, すべての場合に不等式が成り立ち, 等号成立は \[\begin{aligned} (x_1,\cdots,x_n) &= (0,\cdots,0) \quad\text{または} \\ (y_1,\cdots,y_n) &= (tx_1,\cdots,tx_n) \quad (t\text{: 実数}) \end{aligned}\] の場合に限る.

参考

  • 本問で示した不等式は「コーシー=シュワルツの不等式」(Cauchy–Schwarz inequality)と呼ばれる. $n = 2,$ $3$ のときは平面ベクトル, 空間ベクトルの内積に関する不等式 \[ |\vec a\cdot\vec b| \leqq |\vec a||\vec b|\] の両辺を $2$ 乗することで直ちに証明できる. 本問で示したことから, $n$ 個の成分をもつベクトルを考えて, $\vec x = (x_1,\cdots,x_n),$ $\vec y = (y_1,\cdots,y_n)$ の内積 $\vec x\cdot\vec y$ を各成分の積の和 $\vec x\cdot\vec y = x_1y_1+\cdots x_ny_n$ として定義すると, $n = 2,$ $3$ の場合と同様の不等式が成り立つ. $n$ 個の成分をもつベクトルは, $n$ 元連立 $1$ 次方程式や $n$ 次方程式の理論の構築に役立てられている.
  • 別証明については, こちらを参照されたい.
  • 「コーシー=シュワルツの不等式」を使うと, $2$ つのデータの相関係数は $-1$ 以上 $1$ 以下であることが証明できる(こちらを参照).
※$2022/04/18$ 判別式の不等号の向きを修正
(最終更新日: $2022/05/21$)